モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~


「…ああ、それはいい考えですね。
ついでに護身用に銀のナイフも
持っていたほうがいいでしょう。
僕の部屋の魔力に当てられた
状態なら、それで十分凍夜を
追い払えるでしょうから。」

心にもない肯定の言葉で、
素早く姫乃の援護につく。

沙羅が絡んだことでキレた
姫乃の機嫌を直すのは、
不機嫌な凍夜をなだめるより
はるかに面倒なのだ。

これはからかいすぎだと、
いまだに妻への接し方の
加減がわかっていない凍夜に
合図を送る。

それに気付いているのか
いないのか、凍夜は
そっぽを向いた。

「…せっかくですから、
沙羅も一緒に、三人で楽しく
過ごすのはどうです?
凍夜の日ごろの態度に対して
思うところを語りながら。」

「え?わたしもいいの?」

いいもなにも、事の発端は
沙羅の一言なのだから、
姫乃を落ち着かせるぐらいは
してもらわなければ困る。

「それで、凍夜?いいんですか?
このまま決定してしまっても。」

「…。」

不機嫌そうにちらりと
姫乃を見た凍夜に、朔夜が尋ねた。
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