モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~
「…沙羅の事はもう、
どうでもいいよ。飽きた。」
「女性を泣かせておいて、
その一言で終わりですか。」
あくまでも自分中心な
兄の言葉に、朔夜が
本心からそうこぼせば、
凍夜はちょっと考えてから
姫乃に近づいた。
凍夜から顔をそむけている
姫乃にだけ聞こえる声で
謝罪の言葉を述べる。
「…。…知らない。
凍夜なんて、好きにすれば
いいんだわ。」
不機嫌なままの姫乃は
そういうと目に浮かんだ
涙をぬぐいながら席を立つ。
それでも、凍夜の謝罪は
多少なりとも効果があったようで。
「…朔夜。やっぱり、わたし、
ちゃんと自分の部屋で寝るわ。
我がままを言ってごめんなさい。」
姫乃はそう、謝罪した。