モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~
「姫乃。いい年して朝の挨拶の
ひとつもできませんか。」
「そんなこと今はどうでもいいの!
それより凍夜は!?」
「お姉さま、おはようございます。」
「ええ、おはよう、沙羅。
風邪はもう大丈夫そうね。
あとで一緒に庭園を
散策しましょうか。」
「いいの?うれしい!」
「…今さっきそんなことと
言い捨てておいて、沙羅だけに
挨拶とは、相変わらず
いい度胸ですね…。」
「だからっ…そうね、ごめんなさい。
おはよう、朔夜。」
「おはようございます。」
「で、凍夜どこか知らない!?」
「知ってますよ。…あなたの後ろに
いるじゃありませんか。」
「え。」
姫乃が振り返るより速く、
凍夜が背後から姫乃の腰を
抱き寄せた。