モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~
「朔夜様、大丈夫?」
沙羅が慌てて朔夜の背をさする。
ドロワーズは、女性の
下着のひとつだ。
スカートの下につける下着で、
これをつけないとスカートが
めくれた拍子に、一番秘すべき
場所が晒されてしまう。
先ほどから、姫乃がやたらと
スカートが広がらないよう
抑えているのは、まさに
いまそういう状態だからだろう。
「僕は隠してないよ。」
「東雲に隠すように命令したんだから
同じことよ!早く返してちょうだい!」
「じゃあ、東雲に聞くんだね。
僕は知らない。」
「凍夜!!」
凍夜の従僕の東雲は今は人の姿ではなく
剣の姿で凍夜の部屋に横たえられている。
凍夜の命令が無ければ人の姿に
変じることができないから、
彼はその姿のままで動くことも
ままならない。
もちろんそのことを知っている
姫乃は、怒って叫ぶ。
姫乃が感情的になる様をこの上なく
おもしろがっている凍夜は、
喜んで火に油を注いでいるのだ。