モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~

「あ、ねぇ。朔夜、これ、さっき
作ったんだけど、よかったら
味見してみない?」

「朔夜様、わたし、風邪なおったから、
今日の午後のお出かけ、
一緒にいってもいい?」

「朔、キミ、姫乃にまた
余計な入れ知恵をしただろう。」



今、朔夜は同居人たちから、
当たり前のように昔捨てた名で
呼ばれている。


双子の兄である凍夜と、その妻の姫乃。
姫乃の妹の沙羅。

三人は、口々に朔夜の名を呼び、
他のふたりの話を遮って朔夜に
話しかけてくる。

沙羅に対しては、ちょっとした事情で、
そう呼ぶことを許可してしまい、
ダメだと思いつつも
その懐かしさと心地よさに
ついついそのまま呼ばせている。


しかし。


「…。」

3人の話に黙りこむ朔夜に気付かず、
再び話しかけられる。
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