love letter~章吾~
「……結婚するヤツが今さら何言ってんだよ」
『章吾……?』
今の自分の気持ちを言う代わりに、俺は静かに、呟くようにして聡に言ったんだ。
「おめでとう……――」
言い終えた瞬間。
鼻の奥がツンとしてきた。
すぐ目の前に見えてきた駅が、次第にぼやけてくる。
瞬きをした瞬間に、なぜ、目の前の光景がぼやけているのかが分かった。
「なに泣いてんだよ、俺」
涙の意味も。
自分の気持ちを言葉にできなかった意味も。
今頃になってようやく分かったんだ――。