love letter~章吾~
しまった、と、次第に頭が真っ白になる。
同時に、全身に立ち込める、あのイヤな感じ……。
おそるおそる尾関の方を振り返ると。
あいつは自分の席に座り、だらしのない顔でニヤニヤしながら妄想の世界にイッてしまっていた。
そんな尾関の前で井ノ口が顔をしかめながら、必死にヤツの顔の前で手を左右に振っている。
あぁ。
あいつが幸せな妄想の世界なら、俺はどろどろとした魑魅魍魎の世界に飛んでいきそうだ。
「おい、章吾?……おーい!」
目の前で、聡が井ノ口と同じようなことをしている。
俺は尾関と話したんじゃない。
あれはただの独り言……、そう、ただの独り言なんだ。
呪文のように、俺は何度もそう自分に言い聞かせた。