love letter~章吾~
そう考えると、つい、尾関と少しくらいは話してやってもいいかなと思ったりもする。
「ただいま」
笑顔こそは見せなかったが、ぼそりと呟くと、尾関は口をぽかんと開けたまま固まる。
「……笠原くん、いま……」
「なんだよ」
尾関の顔を見て二言目を返す。
尾関の大きな瞳から、涙がはらはらと零れ落ちた。
「喋った……。喋ってくれた」
「うるせぇよ」
本当に嬉しいらしく、尾関の涙は止まることを知らない。
たかが喋っただけで泣くこたないだろうが。
この会話が最後になるから、喋ってやってるだけだ。