love letter~章吾~
「俺も行く」
あとに続こうとする俺を、聡が止めた。
「成美ちゃんが戻ってくるんだから待っとけよ」
別に、ここで待たなくたっていいだろ?
そう思ったけれど……。
尾関と二人きりになるということは、願ってもないチャンスだと思いなおす。
もともと聡たちと一緒に水族館に来たのだって、尾関に聡と付き合っている真相を聞こうと思っていたからだ。
聡がトイレの方向にゆっくりと歩いていく。
尾関はその後ろ姿を見送ると、巨大な水槽に再び視線を向けた。
もちろん、ほんのわずかでも、俺の方など見向きもしない。
『あたしの中に、あなたは存在していません』
今の尾関にとっての俺の存在は、空気のようなものに思えた。