幸せをくれた君に
ニコニコといつもと変わらない笑顔の社長に毒づきたい気分になるが、それをグッと抑える。

一介の社員が社長に盾突くことなど許されない。


「黒川君とは長い付き合いだし、無下に友人の頼みを断ることもできなくてね」

そうは言ってみても、それだけじゃないことは明らかだ。


黒川物産は俺の会社のシステムを取り入れてくれている大手の取引先。

社長の言う黒川君とは、黒川物産の専務にあたる。

会社として大事にしたい相手であるのは違いない。

黒川物産の専務には一人娘がいるらしく、その婿選びに頭を悩ませていることを相談されたとか……。

で、社内で一番、その一人娘とやらと年齢も近く、未婚の俺に白羽の矢がたったのだ。
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