幸せをくれた君に
「社長、俺には結婚を考えている彼女がいます。そんな俺が専務の娘さんに会うのは失礼にあたるのでは……」

「かまわんよ。彼女を大切にしなさい。だがその上で、相手に失礼なきように断る……それも君がこれから出世していく上では必要なステイタスだと思うがね」

俺の最後の足掻きもあざやかにあしらわれる。

社長の目は面白がっているようだ。

きっと、この目で、いろんな人間を見てきたのだろう。

有益な人材かどうかを……。


そして俺にも人並みに出世欲なんてものもあった。

「分かりました。先方から断っていただくように振る舞うつもりですが、それでかまわないのなら……」


「それでかまわん。よろしく頼むよ」



何となく話が一段落した時にタイミングよく、社長室の電話が鳴り響いた。
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