幸せをくれた君に
「ちょっと、失礼」

社長は俺に断りを入れ、受話器をあげた。

もしかしたら、大事な取引に関わる電話かもしれない。

俺は、退室しようと腰をあげた。

「あぁっ、もうこんな時間か、すぐに通してくれ」


そんな言葉とともに受話器をおき、俺に向き直る。


「すまないが、来客だ。君も少し挨拶しておくがいい」

「……分かりました」


俺は胸ポケットにある名刺入れを確認する。

名刺入れの中に数枚はまだ名刺が残っていたはずだ。
後で足しておかねばならない。



『失礼します』

ドアをノックする音から一瞬、遅れて聴こえてきたのは若い男の声。

「入りたまえ」
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