幸せをくれた君に
社長の許可とともに入ってきたのは、声から予想どおり若い男。


そして、予想以上のイケメンという奴だった。


女が喜びそうな端正な整った顔立ちとスラリとした長身。

男の俺から見れば、何だか嫌な奴だ。


「申し訳ございません、社長。ごふざたしております」

男は穏やかな物腰で丁寧に一礼をする。


「よく来てくれた。家内が君に相談にのって欲しがっているのでな。きっとわしに保険金をかける算段に違いない」

社長は冗談めかした口調でそんなことをうそぶきながら、上着を手にしている。

どうやら、この男と外出するらしい。


「奥様は社長のご健康をそれは気にされておりますから、そんなことを冗談でも申されるべきではないかと」


さらりと返す答えは完璧だ。
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