幸せをくれた君に
久賀稔という男に会った夜、俺は理沙と俺のマンションで会うことになっていた。



俺がシャワーを浴びてリビングに行くと彼女はソファーでのんびりと横たわり、雑誌をペラペラとめくっていた。


何か興味をひかれる記事でもあったのだろうか、俺に気づくことなく真剣に目を通している。

いつからだろう。
そんな風に飾らない姿を見せてくれるようになったのは。

初めて身体を重ねても、初めてお泊り旅行に出かけても、理沙からある種の緊張感みたいなものを俺は感じていた。

理由を幾度となく尋ねてみても、見かけによらず頑固な彼女は『もう少し時間が欲しい』と言うだけで、話そうとはしなかった。


そして、今、彼女は俺の一番、傍にいる。

彼女は俺を愛してくれている。


それなのに……。
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