幸せをくれた君に
「黒川様がお見えになりました」


給仕の女性が伝えにくると同時に俺たちのテーブル席へ歩いてくる二つの影。


前を歩くのは、中年太りのせいかお腹の出っ張りが目立つ、50歳過ぎの冴えない男。


俺は会うのは初めてだが、黒川専務に間違いないだろう。


そして、後ろから歩いてくる女性の姿を目にしたとき、
俺は……。


俺は……。


息がとまるかと思った。


落ち着いた水色のワンピースを着こなしたセミロングの髪の女。


スタイルも良く、すっきりとした顔立ちに、派手めなメイクもよく似合っていた。


「ほぅ、あの親にしてあの娘ありか。なかなかの美人じゃないか」


社長が驚くのも無理はないだろう。

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