幸せをくれた君に
「これは黒川君、久しぶりだ」


隣の社長が二人を出迎えるために立ち上がる。俺も、なんとかそれに合わせて立ち上がった。


「社長、わざわざすみません」

黒川専務はあえて腰の低い男を演じているのだろう、卑屈なぐらいに社長にペコペコと頭をさげる。


その隣で、娘は……彼女は悠然と微笑んでいた。


俺と視線が交差する。


彼女は俺を見てもまったく表情も変えない。


俺の動揺を嘲笑うかのように、赤いルージュの口元が歪む。


「これが私の娘です。挨拶しなさい」


父親である専務に促されて彼女は口を開いた。


「黒川美香と申します。初めまして」




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