幸せをくれた君に
それから…


それからの事を俺はよく覚えていない。


簡単な挨拶を交わした後、社長と専務と美香と俺でディナーのフルコースを食べ、ワインを飲んだ。


食べたことのない高級食材のオンパレード。


食欲をそそる香り。


けれど、俺には味も何も感じなかった。


ただ、恐怖に近い苦痛だけが全身を支配していた。


目の前で三人が楽しそうに歓談するのをぼんやり眺めつつ、適当に相槌を打つのが精一杯だ。


「美馬さん、お疲れですか?お仕事忙しそうですね」

不意に美香が俺に話を振ってきた。彼女が何を考えているのかが、分からない。


「いえ、そのようなことは……」


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