幸せをくれた君に
そのやりとりの後は当たり前のように沈黙。

なんとなく……
なんとなくだけど、その沈黙から解放されたくなって俺から話をふった。

「……さっき、俺と同じ席にいたよな?神崎理沙さん」

その俺の言葉に、彼女は明らかにうろたえた。

「えっ…まぁ…」

彼女の目が俺をチラリと見ながら、わずかにおよぐ。

(まさか……この反応…)

彼女の反応をみて、俺の中にわきあがるのは、<いたずら心>。

俺はわざと彼女に直球を投げてみる。

「なぁ、俺の名前覚えてる?」


「うっ、げっ」

(あぁ、やっぱり……)

図星をさされた彼女は、奇妙な声をあげた。

悲鳴とも叫びとも言いがたいその声と彼女の申し訳なさそうな顔が思わず笑いを誘う。
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