幸せをくれた君に
そして、彼女がおずおずと握手に応えてくれたことを昨日のことのように覚えているにかかわらず、何故、俺はあのとき君に握手を求めたのか、思い出すことすらできない。

タイプじゃないなんて、本気の恋愛は面倒なんて言いながらも、君に一目惚れをしたのだろうか。



それから彼女の待つタクシーがくるまで、二人でいろんな話をした。

そして、彼女は急に来れなくなった友人の穴埋めのために合コンにきたこと。

他に出席した女たちとは、学部も別で、顔すら知らないこと。

少しお酒を飲みすぎて気分が悪くなったので、帰ろうとタクシーを待っていること。

『私、こういう席苦手なんですよね。なら来るなって思われちゃうけど…』

と、はにかむように笑った彼女の顔に俺は一瞬見とれた。
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