jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
復興会会長が牧師役を務めた。
誓いの言葉を交わしながら、わたしは思った。
(香さんは、数年前にも誓いの言葉を交わしたかもしれなんだよね・・・・・・)
詳しい話は聞いていないが、奥さんがいたと言うことに間違いはない。
1年ほど前、弁護士の協力を得て、離婚届けは成立した。
そして、香さんとわたしは、真論が生まれたときに籍を入れた。
「誓います」
香さんが、わたしを横目で見ながら言った。
何て色気溢れる目付きなんだろうと、今はそこに幸せを感じる余裕しかなかった。
永遠にあなたが欲しい。
身も心も全て、わたしのもの。
誰も知らないであろう、そんな欲張りのわたしは言った。
「誓います」
キスは、羞恥心を踏み台にしながら、神聖に交わされた。

あとは、祭り騒ぎだった。
といっても、場所が場所なだけに、ほとんど身動きが取れなかった。
人数はさほど多くないのだが、雑貨が所狭しと並べられているので、皆、臨時に置かれた椅子に座って会話をしたり、テーブルに並べられた料理に舌鼓を打っていたりしていた。
その料理は、昔、秀斗と誕生日に行った、イタリアンレストランのシェフが作ってくれたものだ。
あの日、香さんと出会った。
なんて滑稽な展開だろうか。
でも、まぁ、皆が楽しそうに騒いでいる姿を見ていると、これでよかったんだと思えた。
香さんと2人の親友のおかげで、ちょっぴり、楽天家となったわたしだ。

しばらくして、扉付近に、前にお世話になった弁護士がいることに気付いた。
(さっきはいなかったような・・・・・・)
弁護士は、わたしと視線が合うと、手招きをしてきた。
(呼ばれてる?)





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