jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
その人は、頭の天辺から足のつま先まで、わたしを一通り見て言った。
「やっと、会えた。香のお嫁さん。そして、今わたしが一番欲しいもの」
(わ・・・・・・わたし?)
透き通った声にピンときた。
「あなたは女性なの?」
「そうだ。雌だ。だけど、まぁ、女々しくはないな。全くもってね」
そして、クスッと笑って、わたしの頬に触れてきた。
「わたしは、香の元妻。蕾さんをいただきに参りました」
「えっ・・・・・・えっ~!? ちょ、ちょっと待ってください! あの、いただきにって!? あなたはわたしを憎んでいらっしゃりますよね!?」
そのシャリにどんな寿司ネタがのるのか?
これが修羅場だと思うと、緊張と恐怖で舌を噛んてしまったようだ。
「いいえ、わたしから、香の元を離れていったんだし・・・・・・。最終的に、わたしたちは恋愛関係ではなかった。少なくともわたしの中ではね。人間は変化していくから。それに、元から宿った性質のせいでもあるし」
話の内容が全く掴めないわたしは、慌てふためいていた。
「可愛い子ヒツジさん、これは、わたしから香への祝い手紙。ポストに投函~っと」
その封筒は、ポスンと音を立てて、ポストに収められた。
「この中にはね、成立した離婚届が入ってる。ごめんね、実は、香の元に来ていた警察官も弁護士も、わたしが雇った者。スパイ的な感じ」
(あなたは、スパイス的な感じです・・・・・・)
危うくそう言いそうになった。
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