jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
襖を開けて、ある一室に入ると、木目が美しい大きなテーブルがあった。
これでもかとニスが塗られていて、恐ろしいくらいに艶があった。
端は真っすぐにカットされているのではなく、波打ったように不規則な形をしていた。
シルクを想わせるような肌触り良い座布団に座ると、千砂兎さんは池墨さんに目配せをした。
彼は一礼をして、部屋を出て行った。
警察官のときの温和な雰囲気とは違う、きびきびした姿を目にすると、全く別人のように見えた。
池墨さんが入れてくれた緑茶を飲みながら、一服していると、千砂兎さんが話の続きを持ち出してきた。
「香との出会いは、わたしが工芸大学に入学したときだった。その大学に、修理サークルという異名なサークルがあった。だが、専用の教室も用意されているほど、力が入ったサークルだった。教室の入り口には、貼り紙があった。『1.修理は心を込めて 2.修理に諦めはない 3.雑貨はオリジナリティーに 4.目指せ時計修理技能士』と」
(これを考えたのは、香さんだよね?)
思わず、笑ってしまった。
千砂兎さんは、わたしの気持ちに勘付いたのか、一緒に声をあげて笑った。
「そうさ、あいつは変だ。修理や創作に異常な執着心がある。まぁ、続きを聞いてくれ」
「はい」
可笑しすぎて、目頭に涙が溜まった。
これでもかとニスが塗られていて、恐ろしいくらいに艶があった。
端は真っすぐにカットされているのではなく、波打ったように不規則な形をしていた。
シルクを想わせるような肌触り良い座布団に座ると、千砂兎さんは池墨さんに目配せをした。
彼は一礼をして、部屋を出て行った。
警察官のときの温和な雰囲気とは違う、きびきびした姿を目にすると、全く別人のように見えた。
池墨さんが入れてくれた緑茶を飲みながら、一服していると、千砂兎さんが話の続きを持ち出してきた。
「香との出会いは、わたしが工芸大学に入学したときだった。その大学に、修理サークルという異名なサークルがあった。だが、専用の教室も用意されているほど、力が入ったサークルだった。教室の入り口には、貼り紙があった。『1.修理は心を込めて 2.修理に諦めはない 3.雑貨はオリジナリティーに 4.目指せ時計修理技能士』と」
(これを考えたのは、香さんだよね?)
思わず、笑ってしまった。
千砂兎さんは、わたしの気持ちに勘付いたのか、一緒に声をあげて笑った。
「そうさ、あいつは変だ。修理や創作に異常な執着心がある。まぁ、続きを聞いてくれ」
「はい」
可笑しすぎて、目頭に涙が溜まった。