jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
志音も、千砂兎さんの姿を舐めるように見ていた。
「龍がお好きで?」
何ともシンプルな会話が繰り広げられることになった。
「あぁ、金色の龍がね。志音さんとやら、あなたは何がお好きで」
「髑髏。龍も嫌いではない」
「そうか。わたしもパンクが嫌いではない。普段は和服とスーツだが、そんな格好もしてみたい」
「今度、大きすぎた上着をやる」
「いいのか? ありがたい。では、わたしが製作した、金色の龍のベルトを差し上げよう」
「すまない」
ここで、一瞬、千砂兎さんの瞳がキラリと光った。
「率直に聞くが、蕾とはどんな関係なんだ?」
金色の龍と漆黒の大蛇が、ちらりと牙を見せ合った瞬間だった。
「わたしと蕾は、親友だ。過去はどうだっていいだろう。お兄さん」
「あぁ、そうだな。不思議と、お前とはライバルになりたいとは思わない」
「わたしもだ」
「志音、わたしが海外に戻っている間、蕾のことは頼んだぞ。おそらく、立つのは来週だが」
「分かった。ライバルに勝つこと、技術向上に、思う存分専念してくれ」
「何かあったら、ここにメールしてくれ。蕾のことでも、パンクのことでも、秘密の恋愛話、何でもOKだ」
「あぁ」
信じられがたい光景が、目の前に広がっていた。
敵対するであろう、龍と蛇が赤外線通信で、連絡先を交換しているではないか!
そうなると、香さんは虎と成りうるだろう。
しかし、1人、仲間外れになってしまったようだ。


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