jack of all trades ～珍奇なＳ悪魔の住処～【完】
『いろんな意味で』という最後のフレーズが、脳内でリピートされていた。
おそらく、皆もそうだろう。
仕事はもちろん含まれるが、あとは、どこからどこまでを意味しているのだろうか？
全く予想のつかない秀斗の指定範囲に、頭を悩ましながらも、ちらちらといやらしい想像が浮かんできてしまった。
（絶対にない･･････絶対にない･･････）
自分がされていたことを、千砂兎さんにするのかと考えると、恐ろしくて目を瞑りたくなった。
「それは、どういう意味なんだ？ わたしの手下になりたいとでも？」
千砂斗さんの弟子になることは、奴隷並みの対応を受けることになりそうだ。
「はい。あなたの仕事を補佐したい。行く行くは、後を継ぎたい。それに、いずれは･･････」
秀斗は、まるで恋した乙女のように、もごもごと口籠っていた。
「なんだ？ はっきりしねぇか！ 女々しいぞ！」
威勢の良い瞳が、千砂兎さんに向けられた。
「けっ･･････けっけけけけっこ」
「鶏になりたいのか？ まぁ、いい。わたしは意外に、女々しい男の方が過ごしやすいことが分かった。正反対だからな。苛めがいもある。蕾の親友として、特別に面接はなしだ。来週までに荷物とパスポートの準備をしておけ。ひとまず、別荘に戻る。蕾、また来るからな」
そう言って、千砂兎さんは、店を出ていった。
背中に刺繍された金色の龍は、生き生きと光輝して見えた。
秀斗が伝えたかったことが、理解できたようなできなかったような･･････微妙なところだが、ここはそっとしておくことにした。

長い長い結婚式が幕を閉じた。

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