jack of all trades ～珍奇なＳ悪魔の住処～【完】

バイク

とある休日。
秀斗は、友人の結婚式に招待されたため、早朝から飛行機に乗り込み、県外へと飛び立った。
だから、今日は昼前から香さんの家に来ていた。
いいじゃないか、別にやましいことはしていないし･･････。
１人で言い訳をしながら、昼食を作っていた。
今日のランチは、オムライスだ。
そして、今からが最後の仕上げ、卵で包み込むシーンだ。
最もスリルがあり、一か八かの賭けでもある。
成功するか、失敗するか、確立は２分の１。
どちらか１つは成功して欲しいと願いながら、溶いた卵をフライパンに流し入れ、淵が固まってきたところで、ケチャップのからんだチキンライスを中央に乗せた。
素早くライスの形を整えたあと、息を呑んだ。
「この次よ！ 絶対成功させてみせる！」
フライ返しを両手に持ち、クルッとひっくり返したその瞬間、外からバイクの激しい音が聞こえた。
美しい完璧な形のオムライスが目の前に存在するにも関わらず、わたしは即座に火を消し、興味を外に向けた。
すぐさま、ケチャップでハート形をペイントされなかったオムライスは、いら立っているだろうと思いながらも、急いで窓を開けて見下ろした。

案の定、店の前には大型バイクが停まっていて、乗っていた大男が降りようとしているところだった。
（お客さん？）
普段は、大人しそうなマニアや、上品さ溢れたお客さんが来るのに、こんなワイルドな客も来るんだとしみじみその男性に見入っていた。