jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
遠くから見ると暗かった道も、実際歩いてみると、所々からぼんやりとライトに照らされ、思ったよりも明るく感じた。
優しく光るライトとは裏腹に、闇夜に浮かぶ満月は、我が妖美さを主張するかのように気高く輝いていた。
スーッと頬や脇に差し込んでくる風に軽く鳥肌を立てながら、わざとに人気の少ない方向へと足を進めた。
わたしには誰もいない。
秀斗だけ・・・・・・彼だけ・・・・・・。
普段唱える呪文も空間が変わるだけで、これほど虚しい気持ちになるとは思いもしなかった。
それにしても、この通路はいったいどこまで続くのだろう?
わたしの虚無感に終わりが見えてこないように、この道も果てしなく続くのだろうか?
それはわたしの考えすぎであったようだ。
前方には、暗闇を帯びてチョコレート色になったレンガの壁が広がり、その上を深緑のツタが這っていた。
その葉は、まるで生まれたての赤ん坊の手に、墨汁を塗ったかのようだった。
汚れを知らない数多の手に手招きされているようで、背筋が凍りつくような感覚に陥った。
(戻ろう・・・・・・)
そう思って、ふと視線を左横に向けると、また1本の通路があった。
その瞬間、わたしは目を疑った。
そのすぐ先には、レンガと木で造られた小さな店があり、今は秋だというのにクリスマスツリーが飾られ、多種多様なキャラクターのフィギュアやドールがランダムに並べられていた。
昭和を感じさせるレトロなうさぎの置物の腹部には、大きな黒い時計が組み込まれていて、遠くからでもかすかに秒針の音が聞こえてきた。
優しく光るライトとは裏腹に、闇夜に浮かぶ満月は、我が妖美さを主張するかのように気高く輝いていた。
スーッと頬や脇に差し込んでくる風に軽く鳥肌を立てながら、わざとに人気の少ない方向へと足を進めた。
わたしには誰もいない。
秀斗だけ・・・・・・彼だけ・・・・・・。
普段唱える呪文も空間が変わるだけで、これほど虚しい気持ちになるとは思いもしなかった。
それにしても、この通路はいったいどこまで続くのだろう?
わたしの虚無感に終わりが見えてこないように、この道も果てしなく続くのだろうか?
それはわたしの考えすぎであったようだ。
前方には、暗闇を帯びてチョコレート色になったレンガの壁が広がり、その上を深緑のツタが這っていた。
その葉は、まるで生まれたての赤ん坊の手に、墨汁を塗ったかのようだった。
汚れを知らない数多の手に手招きされているようで、背筋が凍りつくような感覚に陥った。
(戻ろう・・・・・・)
そう思って、ふと視線を左横に向けると、また1本の通路があった。
その瞬間、わたしは目を疑った。
そのすぐ先には、レンガと木で造られた小さな店があり、今は秋だというのにクリスマスツリーが飾られ、多種多様なキャラクターのフィギュアやドールがランダムに並べられていた。
昭和を感じさせるレトロなうさぎの置物の腹部には、大きな黒い時計が組み込まれていて、遠くからでもかすかに秒針の音が聞こえてきた。