jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
その約束が、恐ろしい契約だと気付いたのは帰ってからだった。
パジャマに着替えようと服を脱いだ。
すぐ側にある全身鏡に映った自分が、ふと目に入った。
その直後、全身に鳥肌が立った。
それは寒いからではなかった。
肩のところどころが、薔薇の花びらを散らしているかのように、赤く染まっていたのだ。
点々と記されたそれは・・・・・・キスマークだった。
(信じられない・・・・・・)
あの、電流が走ったような独特な痛みの謎が解けた。
恥ずかしながら、今まで誰にもキスマークを付けられたことがなかったので、その感覚の正体が掴めなかったのだ。
鳥肌が立っていても、肩だけは熱く火照っているように感じた。
(香さん・・・・・・)
こんな風にめちゃくちゃにされても、彼が恋しくなってしまうわたしは変梃なんだろうか?
わたしはこれから、異様な愛情表現がどんどん快感になっていくだろう。
だけど、その表現の乱用が許されるは香さんだけだ。
もっともっと深く愛して、もっともっと深く侵して・・・・・・。
パジャマを着るのも忘れて、今までで1番、艶麗になった肩に魅入っていた。

今週は秀斗に会えないだろう。
もし、上手い言い訳が見つかったら、またマーキングしてもらおう。
鏡に映った今日のわたしは、香さんと違って悪魔のようだった。


< 37 / 159 >

この作品をシェア

pagetop