jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
だけど、もう手遅れだった。
彼の手は、胸だけでなく、スカートの中へと侵入してきた。
太ももが撫で上げられ、恐怖と羞恥で狂ってしまいそうだった。
さらに、彼の短い黒髪と健康そうな小麦色の肌は、秀斗を思い出させた。
鳥肌が絶え間なく生まれ、凸が激しくなってきた。
(香さんっ! 助けて!)
歯を食い縛って耐えるしかなかった。
いつものことなのに、嫌で嫌で仕方なかった。
そう、秀斗と、体の関係になりたいとは思えない。
無理やりだから・・・・・・。
そう、わたしにとっては無理やりだから・・・・・・。
好き嫌いとかの問題じゃないんだ。
大切な部分だけは、絶対に守り切ろうと体を捻じった。
その瞬間、時間帯的に聞こえるはずのない香さんの声が聞こえてきたのだ。
「ただい・・・・・・ま・・・・・・?」
(香さんに見られたくない・・・・・・)
そう思って、目を瞑った。
すると、激しい靴音が鳴り響いたあと、カメラマンの叫び声が聞こえた。
「すっ、すまない・・・・・・許してくれ。あまりにも可愛いから・・・・・・つい・・・・・・」
「ついじゃ、すまねぇよ! 俺がどれだけ彼女を大切に扱っていると思ってる!? 触るんじゃねぇぞ、おら! 要件はなんだ! 早く言わねぇと、殴り殺すぞ!」
(か・・・・・・香さん、助かったし、嬉しいけど、キャラ変わってますよ~)
命の危険を感じたわたしは、目を瞑ったまま、カメラマンの助け舟に入った。


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