jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
何の返答もなく、生唾を飲みこんだ音だけが体内に響いた。
恐怖を超越してしまったのか、徐々に涙が浮かんできた。
「香さん・・・・・・怖いよ、助けて・・・・・・」
そう言いながらも、心の中では、震えた声だけが部屋に虚しく響き、暗闇に吸い込まれていくのだろうと覚悟していた。
すると、薄暗い部屋から聞きなれた声が聞こえてきた。
「蕾? 起きてたの? あまりにも熟睡してたから、寝言で僕を呼んでいるのかと思ったよ」
「違うわ! わたし怖かったのよ! 怖くてどうしようもなかった」
「ごめん・・・・・・。訳ありでさ。種明かしの前に聞きたいことがある」
「何?」
相変わらずの、意味不明な発言とシチュエーションに、わたしは気が高ぶりそうだったが、ここは観念して平常心を保つことにした。
「今、蕾は何が欲しい?」
子どもだと言いたかったが、今まで一度も深い体の関係を持たなかったので、タブーな刺激になってはいけないと思い、喉の奥に封じ込めた。
愛する人と全身で交われない、そんなわたしが一番欲しいものって・・・・・・きっと香さんだ。
でも、そんなことはっきり言えるわけがなかった。
「わたしは・・・・・・大好きな香さんと、何かを育てたい。一緒に愛を注ぎたいの。あっ、だから、わたし調べたんだ。あのね、キンクマハ」
続けようとした言葉を香さんは遮った。
「言わなくていい・・・・・・。僕はもう知っているよ。蕾の小さな望みをね。見えちゃったんだよ、調べ物。大きな望みがいつか叶うまで、小さな望みを積み重ねていこう。それも幸せの形さ」
恐怖を超越してしまったのか、徐々に涙が浮かんできた。
「香さん・・・・・・怖いよ、助けて・・・・・・」
そう言いながらも、心の中では、震えた声だけが部屋に虚しく響き、暗闇に吸い込まれていくのだろうと覚悟していた。
すると、薄暗い部屋から聞きなれた声が聞こえてきた。
「蕾? 起きてたの? あまりにも熟睡してたから、寝言で僕を呼んでいるのかと思ったよ」
「違うわ! わたし怖かったのよ! 怖くてどうしようもなかった」
「ごめん・・・・・・。訳ありでさ。種明かしの前に聞きたいことがある」
「何?」
相変わらずの、意味不明な発言とシチュエーションに、わたしは気が高ぶりそうだったが、ここは観念して平常心を保つことにした。
「今、蕾は何が欲しい?」
子どもだと言いたかったが、今まで一度も深い体の関係を持たなかったので、タブーな刺激になってはいけないと思い、喉の奥に封じ込めた。
愛する人と全身で交われない、そんなわたしが一番欲しいものって・・・・・・きっと香さんだ。
でも、そんなことはっきり言えるわけがなかった。
「わたしは・・・・・・大好きな香さんと、何かを育てたい。一緒に愛を注ぎたいの。あっ、だから、わたし調べたんだ。あのね、キンクマハ」
続けようとした言葉を香さんは遮った。
「言わなくていい・・・・・・。僕はもう知っているよ。蕾の小さな望みをね。見えちゃったんだよ、調べ物。大きな望みがいつか叶うまで、小さな望みを積み重ねていこう。それも幸せの形さ」