jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
警察官の表情は、聊か哀感が漂っているものの、比較的穏やかだった。
そんな様子から、緊急を要する切羽詰まった恐ろしい事件ではないと確信できたので、安堵した。
だけど、わたしには1つの疑問が生まれてきた。
(香さんは、何年も誰かを探している・・・・・・いったい誰?)
真相を知るのが怖くなって、わたしはマロンの餌に頭を切り替えた。
「香さん、わたし行ってくる」
咄嗟に飛び出たわたしを、香さんは引きとめることができなかった。
傘はささなかった。
霧雨を浴びるくらい、全く冷たく感じなかった。
もうすぐしたら、もっと冷酷な鉄の塊を、体中に埋められるかもしれない。
それくらい悲痛なことが待ち受けているような、そんな気がするのだ。
(とにかく、餌と取りに行かないと!)
わたしは走り出した。
ペットショップは、まだ開いていた。
安堵で胸を撫で下ろしているうちに、外観を見る余裕も生まれてきた。
普通なら、ガラス越しにペットや商品が見られるよう工夫されているはずなのに、この店は大半がレンガやタイルの壁で覆われていた。
正面の看板には、カタカナで『ペットショップ・ジュワーノ』と表記されていた。
高級菓子店のようなハイカラな店名に、思わず、一笑してしまった。
香さんの店と似たような扉を開くと、レジカウンターにお婆さんが座っていた。
(香さんが言ってたお婆ちゃんだ・・・・・・。特別な会話をしなかったらいんだよね)
わたしは勇気を振り絞り、わき目も振らず真っすぐカウンターに向かって進んだ。
そして、手に冷や汗を握りながら、雛鳥のように口をパクパク開いた。
そんな様子から、緊急を要する切羽詰まった恐ろしい事件ではないと確信できたので、安堵した。
だけど、わたしには1つの疑問が生まれてきた。
(香さんは、何年も誰かを探している・・・・・・いったい誰?)
真相を知るのが怖くなって、わたしはマロンの餌に頭を切り替えた。
「香さん、わたし行ってくる」
咄嗟に飛び出たわたしを、香さんは引きとめることができなかった。
傘はささなかった。
霧雨を浴びるくらい、全く冷たく感じなかった。
もうすぐしたら、もっと冷酷な鉄の塊を、体中に埋められるかもしれない。
それくらい悲痛なことが待ち受けているような、そんな気がするのだ。
(とにかく、餌と取りに行かないと!)
わたしは走り出した。
ペットショップは、まだ開いていた。
安堵で胸を撫で下ろしているうちに、外観を見る余裕も生まれてきた。
普通なら、ガラス越しにペットや商品が見られるよう工夫されているはずなのに、この店は大半がレンガやタイルの壁で覆われていた。
正面の看板には、カタカナで『ペットショップ・ジュワーノ』と表記されていた。
高級菓子店のようなハイカラな店名に、思わず、一笑してしまった。
香さんの店と似たような扉を開くと、レジカウンターにお婆さんが座っていた。
(香さんが言ってたお婆ちゃんだ・・・・・・。特別な会話をしなかったらいんだよね)
わたしは勇気を振り絞り、わき目も振らず真っすぐカウンターに向かって進んだ。
そして、手に冷や汗を握りながら、雛鳥のように口をパクパク開いた。