jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
結局、2冊の雑誌を買うはめになってしまった。
1人暮らしには少し堪えたが、仕方ない。
これも惚れたものの弱みに分類されるのかもしれない。
そんな余計なことを考えながらも、心の中は浮かれていた。
家に辿り着くやいなや、電源を入れたばかりのこたつに潜り込み、そして雑誌にのめり込んだ。
街角スナップが多く掲載されていて、1つ1つの写真の下には、撮影した県名、ニックネームと年齢、職業、相手がいるかいないかの紹介までもが書かれていた。
(あ~、カッコイイ・・・・・・)
病んでいた反動か、このときのわたしはイカれ、ウカれ、非常なほどハイテンションだった。
そんな中、一瞬で思考が停止した。
わたしが見つめる一点には、ある男装女性がいた。
撮影場所はわたしと同じ県で、しかも同じ地域だった。
彼女を取り巻く背景に見覚えがあったのだ。
(ここは・・・・・・会社の近くにある公園だ!)
その公園には特殊な噴水がある。
上向き加減のテディベアの口から、噴水が上がるのだ。
しかも、石造であるにも関わらず、外観は可愛く派手なデザインで、首元にはリボン、ハート柄のシャツが彫刻されているのだ。
こんな噴水は、この公園にしかないだろう。
テディベア様々だ。
志音、24歳、フリーター、なしと書かれていた。
ということは、4歳年下で、付き合っている相手はいないということだ。
男装女子だからといって、女性と付き合えるかどうかは分からないが、とにかく友達にだけでもなりたいと思った。
咲かない花、蕾は、今度こそはと発動し始めた。
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