jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
それからというもの、わたしは自分が行動していた時間を変えた。
今まで数年間、公園の横を通って会社に通勤していたが、1度も彼女に遭遇したことはなかったからだ。
彼女はフリーターだ。
もしかしたら、公園近くの商店街かショッピングセンターでバイトをしているかもしれない。
イメージ的には、ファッション系や美容系の仕事だ。
もしそうならば、朝の通勤も帰りの時間も遅くずらしてみたら会えるかもしれない。
朝は開始が早いので仕方ないが、定時に終わったあと、近くの商店街を寄り道してみてもいい。
少し、不規則に砕けた生活を送ってみればいいのだ。
写真の彼女は、表紙のモデルのように黒を基調としたパンク系だった。
きっと、黒が彼女のシンボルの色だろう。
探すんだ、あのそそられるような、強気で妖艶な瞳を・・・・・・。
あの瞳で、わたしを射抜いて欲しい。
今思うと、わたしはSっ気のある人が好きだ。
香さんもそうだったと回想されたが、即時に脳裏の片隅に追いやった。

平日は毎日寄り道を続け、休日は秀斗との約束の時間までは、公園で読書をしたり、ばれないように人間観察をして暇を潰していた。
しかし、直向きな努力も虚しく、志音らしき人物は見つけることができなかった。

今日も寒い公園で読書をしていた。
日が経つにつれて、ベンチの冷たさが身に染みるようになってきた。
作戦開始から、もう3週間ほどが経っていた。






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