jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
「薔薇の蕾・・・・・・」
「綺麗だろう? 世界中のどのツリーよりも美しい。ブリザードフラワーだから、永遠に枯れないよ。僕と蕾の愛のように」
(これは香さんなりのプロポーズ? やっぱり変わってる・・・・・・ )
そう思いながらも、嬉しく感じるわたしも同類なのだろう。

心の準備はできているようで、やはり出来ていなかった。
ベットに優しく降ろされたものの、恥ずかしくて香さんの顔がまともに見れなかった。
ツリーは右側で光っていて、逆に左側に目をやると、マロンの家があった。
飼い始めた当初と変わらない、ハムスターハウスに、わたしの心は踊った。
それと同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
わたしは、マロンのことも置いてきぼりにしてしまったんだ。
あなたの母親だったのに・・・・・・。
わたしはなんて残酷だったんだろう。
「マロン・・・・・・」
小声で呼んだそのとき、フワフワの巣箱から、ひょっこりと顔を出してきた。
「マロン・・・・・・ごめんね」
「蕾、マロンだって、ずっと待っていたんだよ。僕が蕾を抱く前に、先にマロンを抱き締めてあげて」
わたしが頷いて、上体を起こしている間に、香さんがマロンをハウスから取り出して持ってきた。
「ごめんね・・・・・・。マロン・・・・・・ごめんね」
呪文のように何度も何度も呟きながら、マロンを抱き締めていた。
動物はなんて無垢で純粋なのだろう。
そして優しく、温かい。
こんなわたしを受け入れて、揺るぎなく愛してくれるなんて・・・・・・。
「マロン、I LOVE YOU・・・・・・だよ」
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