jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
「マロン、お母さんが帰ってきてくれてよかったね。さぁ、次は僕を慰めて欲しいよ、蕾」
香さんは待ちきれない子供のように、いじけた素振りを見せてくるにも関わらず、オトナの男の顔をしていた。
わたしからマロンを優しく引き剥がし、ハウスへ入れてしまうと、わたしを押し倒して、今度は丁寧に服を剥ぎ取っていった。

どうして、こんなに幸せなんだろう?
嫌いだったはずの行為がこんなに愛おしく思えるなんて・・・・・・。
もっと、もっと、深く、わたしを抱いて、口づけて、突き上げて・・・・・・。
全身を包み込む濃厚で温かい海の中で、わたしは波の動きに合わせて動かされていった。
引いたり満ちたりを繰り返しているうちに、徐々に砂浜が見えてきた。
打ち上げられそうになっても、海の中に引きずり込まれ、また打ち上げられそうになる。
(もう、無理だよ・・・・・・。わたしは、あなたを・・・・・・愛しています)
そう愛の言霊が頭の中で響き渡った瞬間、味わったことのないような快楽が全身を襲った。
気付いたら、砂浜に打ち上げられていた。
海水に濡れすぎて、表面は寒く感じたが、内なるものは温かかった。

香さんはわたしの頬に手を添えた。
「蕾・・・・・・愛してるよ」
髪が乱れ、燃えるような瞳をした香さんは、極上にセクシーだった。
「わたしも・・・・・・愛してる」
わたしは、あなたの瞳に美しく映っているのでしょうか?

これが、わたしたちにとって、初めての夜だった。
< 97 / 159 >

この作品をシェア

pagetop