年下だからってなめないで!
雪那side
「ゆきりーん♪帰ろーぜ!」
放課後の賑やかな教室内でうるさいくらいに自分を呼ぶ声に自然と眉間にシワが寄った。
彼はそんな自分にお構いなしでベタベタとまとわりついてきた。
「くっつくな」
嫌そうに彼のことを引きはがすと横をすり抜けて教室を出た。
しかし、彼はそんな態度に慣れたように雪那の後を犬のように笑顔で着いてきた。
はぁ、と小さくため息をついてる間に昇降口に着いてしまった。
「なー、今日こそ遊びに行こーぜ!」
靴を履き替えながら、昨日も聞いた誘いにまたしても昨日と同じ断りを入れた。
「バイト探すから無理つってんだろ」
えー、と文句を言ってるやつに構わずに昨日結局バイトが見つからなかったので今日こそは、と意気込んだ。
「昨日、と言えば...」
「え?なんか言った?」
「あ、いや...」
あの女の人、あの後どうしたんだろ...
雪那はふと、昨日の駅での出来事を思い出した。
自分が昨日した行動に今更恥ずかしさがこみ上げてきた。
たまたま、バイト探しの帰りに駅で見かけた女の人は寒い駅のホームで1人綺麗な涙を流していた。
その光景にいてもたってもいられず、勝手に足がそこに向かってて...
ハンカチを差し出していた。
名前も知らないその人はすごく驚いてて、受け取ってくれなかったことに対してしびれを切らしてしまってハンカチを押し付けたままその場から逃げるように帰ってきてしまった。
まぁ、2度と会うこともないだろうから、いいけど。
でも、やっぱりあの人のことが頭から離れなくて...
容姿だってちゃんと覚えてる。
そう、丁度あのくらいの背で髪はふわふわしたあの人に似合ってる暗めのブラウンで...
「...は?!」
雪那が驚くのも無理はない。
目の前には大勢の男子高校生に囲まれた昨日のあの女の人が立っていたのだから...