運命の歯車
始まりの瞬間
第一章。

明るい空。

晴れ渡るかのように明るく、

太陽の光が降り注いでいる。

見渡す限りの花。

華やかな色使いに鼻を、

くすぐったくするかのような甘い香り。

その中で孤立していた。

別に花が似合う訳ではない。

ただ気がついた時にはこの場所にいた。

でも。

何故かこの場所から離れられなかった。

僕の本能は一秒でも早く、

離れろと頭に命令している。

しかし、

その命令を受け取った脳は、

僕の意思とは反対に身体を、

動かそうとしなかった。

正確には動かせなかったのかもしれない。

今思えば、

この光景をみるのは初めてでは、

無かったと思うし、

きっと気味が悪い夢か、

何かなのかもしれない。

離れろと命じる本能と

離れたくないという僕の身体もとい意思。
正しいのはどちらなのか。

そんな事を思っている内に、

太陽が堕ちてきていた。

本来なら“沈む”筈の太陽。

だけど僕の目には、

堕ちていく様に見えて気がしなかった。

太陽が沈んでいく中……

僕はただ何かを考えていた。

でもそれはきっと僕の意識が、

正気に治った瞬間にその疑問は、

身体の深層へと消えていくに違いない。

だってこれは幾度となく、

体験しているのだから。

体験している筈の記憶が残らないのは、

理由とか分からないけど、

原因があると思う。

思った所で体の自由がないのと同じ僕は

ただひたすら時間が、

過ぎ去るのを待つだけだ。

ただ待つと言っても、

今みたいに何かを、

考えたりする事は出来るし、

勿論、息だってしている。

最も呼吸をしない生物がいたら、

是非見てみたいと思う。

そんな中、

太陽はもうすぐ沈む位置まできていた。

それを見て。

もうすぐ沈むのかな。

そんな事を思った。

それが最後の思考だったと、

僕の記憶は記録をしている。

僕自身の記録は太陽が沈むまでただ、

花畑の中心に立っていた事になっている。
この差は何なのだろうか？
< 1 / 2 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop