魔法の言葉で夢を見させて?〈完〉
頭を撫でると
ふっと、舞の顔が綻んだ。
「ねぇ、聞いて」
「ん?どうした?」
ゆっくりと話し始める舞。
話し始めたってことは、機嫌が治った証拠。
今回もやっぱりふとした瞬間に機嫌がよくなった。
「今日ね、引っ越し業者のお兄さんがね、私のマグカップ割ったの」
え。
何なんだ。これ。
不機嫌な原因、マグカップ?
可愛すぎるだろ。
てか、業者の兄ちゃん。
何俺の舞を泣かせてんの?
本気でキレるぞ、このやろー。
「そっか。明日休みだから、新しいマグカップ。買いに行く?」
「……いいの?」
「当たり前だろ?舞が1番気に入ったやつ買おうな?」
俯き加減で俺のワイシャツの裾を握る舞。
その手が少し、力を入れた。
遠慮してるな………
そう簡単には治らない。
舞の心の傷は、深い。
いつか。
もっともっとワガママになってくれ。
それに俺はできる限り応えるから。
な、舞?
心の声を聞かせてくれよ?