プリーズ・イート・ミー
「なんて、ウソウソ」

「あ、これっ、もしかして……」

紙袋に印刷された文字に気づく。

「Chez Yoshino ですか?」


シェ・ヨシノといえば、半年先まで予約が取れない人気のフレンチレストランだ。
うちの会社とも取引がある。


「ああ、さっき行ってたんだ。急遽ワイン入荷したいっていうから、車で納品してきた。無理いったからって、それくれた。クリスマスケーキだと」

「そうなんですか! でも、わたしがもらっちゃっていいんですか?」

「いいよ。一人暮らしの男がもらってもわびしいだけだろ。ま、お前もがんばってくれたし。お疲れ様」


目を細め、にっこりと微笑む桐谷さん。
わたしは思わず顔を伏せてしまった。

やだ……そんな優しくしないでよ。

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