プリーズ・イート・ミー
意地悪な顔も、こんな笑顔も、あと1ヶ月しか見れない。

今まで毎日会ってたから……いつもそこにいるのが当たり前だと思ってた。だけど、これからはそうじゃなくなるんだ。

上司と部下なんて、しょせんは他人。なんてもろくて儚い関係なんだろう。

新しい部署に行けば、桐谷さんはわたしのことなんて思い出すこともないだろう。

なんだろ……妙な感情が胸の奥からわきあがってくる。

“まだ帰りたくない”

そんな考えが頭をよぎる。

なんでそんな風に思っちゃうのか、自分でもわからないけど。
もう少し一緒にいたい……なんて考えてしまうわたしは、どうかしてるのかな?

紙袋の取っ手をギュっと握り締める。


「あの……。よかったら、うち、寄っていきませんか?」

「え?」

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