プリーズ・イート・ミー
何が?
そう思って彼の顔を見つめる。

桐谷さんが体をこちらに傾けているせいで、ふたりの距離がさっきよりずっと近くなってる。

視線が絡み合う。

しばらくの沈黙の後、桐谷さんは言った。


「オレ、今、お前の部屋なんか行ったら、ケーキ食うだけじゃ、すまなくなるよ」

「え?」

「あー……もう。ほんと、世の中って、計画通りには進まないな」


困ったような顔してハァと息を吐き出す。


「部下には手を出さない主義だったんだけど。まいった」

「桐谷さん……?」

「もう、いいよな。あとひと月したら、お前オレの部下じゃなくなるし」


そして、わたしの手を自分の口元に持っていくと、その指にそっとキスをした。


「お前のこと、好きだよ」

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