プリーズ・イート・ミー
「うん。あのさ。沙智が入社してうちに配属されてすぐの頃さ、オレら鴨の屋で昼飯、相席になったの覚えてる?」

「うん」


鴨の屋というのは、あたし達の職場の近くにある定食屋。

ある日、一緒に行ったわけでもないんだけど、偶然そこで居合わせたあたし達。

他に席が空いてなかったので、向かい合って座ることになったんだ。


「あの時、沙智、魚の煮付けかなんかの定食くっててさ」

「そうだったっけ? よく覚えてるなぁ……。あたし、全然記憶にない」


というか、和也とはあの日までは仕事以外で話すこともなかったから、どんな人なのかもよくわかってなくて。

あたしとしては、何を食べたかより、緊張していたのをよく覚えてる。


「でさ。見てたら箸の上げ下ろしが優雅っていうかさ。魚の身をすげー綺麗にほぐして食べてたんだ。それ、ちょっと見とれてた」

「えー。そんなとこチェックされてたんだ」

「まぁな。で、きわめつけが……」

「うん」

「サラダに乗ってたパセリ」

「パセリ?」

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