プリーズ・イート・ミー
「あたし、子供の頃から、結婚相手の名字は変わった名前がいいって、ずっと思ってたの。綾小路とか、伊集院とかさ。なんか高貴な雰囲気のヤツ。だって、あたしの田中って苗字、すごく平凡なんだもん」

「お前、なにげにミーハーだな。悪かったな、こっちは山田で。ド平凡で」

「ほんとそうだよー。理想とは全然違う。顔だって、和也みたいな童顔じゃなくてさ。もっとワイルドで男っぽい感じが好きだったはずなのに……」


なんでだろ……? と、あたしは体を彼に近づけた。
小首をかしげ、じっとその茶色い瞳を覗き込む。


「こんなに好きになっちゃってさ」


そしてチュって軽く唇を合わせた。


「だから、責任とってよね」


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