コンプレックス×2
2,崇の場合
一夜明けて冷静になってくると、罪悪感が増してきた。
おもしろそうに笑う香織の笑顔が、それに拍車をかける。
そして全裸の自分を見つめられているのが、途端に恥ずかしくなってきた。
「わぁっ!」と一声叫び、崇はそのままバスルームに駆け込んだ。
バスタブのふちに腰掛けると、改めて携帯 電話 に向かって怒鳴る。
「久治!」
「なんか大変そうだねぇ」
電話のむこうから、のんきな笑い声が聞こえた。
「笑い事じゃないぞ。なんで電話に出ないんだよ!」
「いやぁ、真夜中だからさ。マナーモードにしてて気付かなかったんだよ」
絶対ウソだと直感する。
だが調子のいい久治は、追及してものらりくらりと躱すだろう。
だから話題を変えた。
「おまけに車乗り逃げしやがって!」
「あー、やっぱ怒ってる?」
「当たり前じゃないか! あんなとこで置き去りにされてどうやって香織を送って行けって言うんだ」
するとすかさず久治が言葉尻をとらえた。
「あれ?"香織"って呼び捨て? ずいぶんと仲良くなったんだねぇ」
崇が絶句していると、久治はさらに畳み掛ける。
「それにケータイに出るまでずいぶん時間があったよなぁ。まさかあのままバスターミナルで野宿して電話にも気付かず熟睡ってわけないだろうし」
「当然だろう。お客様を野宿させられるか」
憮然として答える崇に、久治が鬼の首を取ったかのように言った。
「あーっ、やっぱり一緒に泊まったんだ!」
「あのなぁ! 誰のせいだと……」