コンプレックス×2
言うだけ言って、久治は一方的に電話を切った。
崇は携帯電話を再び上着のポケットに入れると、ため息をついた。
"中坊の頃から変わらねーじゃん。いいかげん大人になれよ"
久治の言葉が頭の中でリピートする。
「崇くんクビになっちゃうの?」
ふと見ると、香織がベッドの上に体を起こして、心配そうにこちらを見ている。
「聞いてたのか」
崇はベッドのふちに腰掛けた。
同じ部屋の中であれだけわめいていれば、聞こえて当然である。
「それって私のせい?」
香織が崇ににじり寄ってきた。
「心配ない。クビにはならないよ。香織のおかげで」
キョトンとする香織。
「ツアースタッフがツアー参加者に手を出したらクビになるんだ。当然だけど。でも香織は正式なツアー参加者じゃなかった。おかげでクビが繋がったって事」
「きゃあ、よかったぁ」
香織が崇の背中に飛びついてきた。
背中に触れたやわらかい胸の感触に、崇はドキリとして香織を突き放した。
香織もまた全裸のままだった。