コンプレックス×2
崇は無言で香織を抱きしめた。
そして気になっていた、もうひとつの事をきいてみた。
「なぁ。ところでゆうべ、結局気持ちよくなれたのか?」
「もう。蒸し返すなって言ったの誰ー?」
崇の腕の中で、香織がいたずらっぽく笑う。
「ヒミツ。教えてあげない」
「じゃあ、今から自分で確かめる」
ニヤリと笑って、崇は香織を押し倒した。
これも口実だ。
罪悪感が無くなった今、恋人として改めて香織が欲しくなった。
「エッチ」と罵りながらも、香織はクスクス笑って本気で拒んではいない。
口づけを落とすたびにその笑い声も、甘い吐息に変わっていく。
崇はゆうべ告げることの出来なかった言葉を、香織の耳元で囁いた。
「香織、大好きだ。おまえは?」
「私も……。崇くんが好き」
「割と?」
「すごく」
「気持ちいい?」
「教えない。自分で確かめて」
チェックアウトまでは、まだ時間がある。
図らずも久治の言った通りになったのはシャクだが、そんなことはどうでもいい。
二人はゆうべ以上に甘い口づけを交わし、互いに熱く解け合っていった。
(完)