雛菊~新撰組とcrazygirl~
「いだだ…」
「すまねぇな…」
さっき土方と対戦したときに興奮して土方の首をグギッとやってしまった。
「でもさぁ、源って女だったんだ…」
沖田が関心したように言う。
そんなに男顔でしたか…。
確かに、女にはついていない様な筋肉が私にはついてるし、島原みたいな白い女より色も黒い。小麦色みたいな。
「して……。凉殿、君を隊士にするか否か…」
はぁ…
女は戦っちゃいけねぇのかよ。
「さぁ…知らんが、私を追い出すか残すかはあんた等の自由だ。」
「いや…まぁ俺の小姓兼隊士ってのでいいんじゃあねぇか?」
土方が言う。
何でも良いが、殺されることだけは御免だ。
「そうだな…。じゃあトシの小姓兼隊士にするか。三番隊に入ってもらおう。」
「はいはい」
それだけ言うと皆が部屋から出ていった。
「おい、土方」
「なんだ」
土方に話し掛ける。
「てめェ、どんだけ女と相手したんだよ。」
ブフーッ
土方が茶を口から吹いた。
「なっ…何でそんなこと聞くんだよ…?」
「もう…こんな事なりたくない。」
そう言って、私は左頬を押さえる。
チクッ
手鏡で見ると、痛々しく腫れていた。
「ヒドいモンだよなァ…。
『トシさまの顔に傷なんてつけられないんですもの!』
だとよォ…。
惚れた男の顔を傷つけたく無いのも分からんでは無いが…。」
そう言うと、土方がフッと笑った。
「お前もデケェ図体してる割にはそんな事も考えるんだな…」
デケェ図体…か…。
「いや…私はな…学歴が低いんだ…。
だからと言って頭が悪いだけでも無い。
こう見えて10ヶ国語喋れるからな…。
でもなぁ…私には足りないモンがあるんだ…
心ってのが無いんだよ。
幼い頃から英才教育を施されて…。
物心ついたときには大人の集団と過酷な訓練だぜ。
もうすっかり…
乙女心なんか忘れちまった…。
人を愛すことがどう言う事なのか…。
人に愛されることがどう言う事なのか…。」
「……。」
「…正直、あの女が羨ましかったんだ。
きちんと異性を愛せてさ…
19にもなったら化粧とかするだろ?
でもさ、私はそう言う類いはやったことも触ったことも無い。
源家の末裔とか言う高貴な身分でだぜ?
普通だったらもっとお洒落して、化粧してたりしてたんだろうな…」
「……。」
天井のシミを数えながら私は独り言のように小さな声で心中を図った。
そう言った凉の金の瞳は揺れていた。