嘘恋シアター
わたしは部活に入っていないので、放課後の教室にはわたし1人だ。
もう帰らなくちゃ、と思う。
吹奏楽部のトランペットの音を聞きながら下駄箱に向かう。
遅くなってしまったため、
いつもより少し濃いオレンジ色の空の下をゆっくり歩く。
早く帰りたかった。
そのままお風呂に入って
ベッドの上で今日のことを考えたかった。
ああ、こんな日はお母さんがいてくれたら良かったのに。
だけど今日はお母さんは夜勤で、お父さんは今単身赴任で、家には誰もいない。
バイトから帰ってくるお兄ちゃんの夕食とお風呂をわたしが用意しなきゃいけない。
それが億劫だった。
家に帰ったらスーパーには絶対行かないし、かといってこのまま行く気力もない。
しょうがないので、お兄ちゃんにはお茶漬けで我慢してもらおう。