嘘恋シアター
昼休み。
退屈でもないけど、それほど充実もしてないわたしの高校生活に
ほのかにピンク色を差してくれる、至福のひとときだと思う。
だって授業中は、背中しか見えない笑顔を
昼休みは誰にもバレずに、見れるかr
「べにー。
べにちゃーん。神谷べにさーん。もう。また橋本見てるの?」
…バレてた。
頬杖をつきながらぼーっと見つめていた視線を移すと
わたしを覗きこむようにして目の前で手を振る親友。
そうだ。恵ちゃんにはバレてた。
「お昼食べよ?」
お弁当を持ち上げる親友に
「ん。」
とだけつぶやいて、曲げてた背筋を戻して机を空ける。
「あきないねー。べにも。」
と呆れ半分に、あとの半分は面白がって笑う親友に
「…ケイちゃん。」
なにも言えなくて困り顔で返す。
確かに、下手したら見ているだけで終わってしまいそうなランチタイムに
お弁当を無駄にせず、午後ひもじい思いもせず
きちんと食べれているのは恵ちゃんのおかげだと思う。