嘘恋シアター




「神谷?」


橋本君に覗き込まれてハッとした。

授業終わってすぐの放課後は
そうは言っても人がいるので、
わたしたちは校門で待ち合わせをした。


「えっと…ごめんなさい、なんだっけ?」


橋本くんが頭をもたげて、
「はぁ」って本当に小さくだけどため息をついた。


胸がズキッとする。


「どこか行きたいところある?…って聞いた。」


「ごめんね、考えごとしてて。
えっと、行きたいところ…」


橋本くんと一緒ならどこでもいい。


…なんて、言えるはずない。


だってこれは、橋本くんにとっては重大な一大計画。


わたしの行きたいところに行ったって、
橋本くんの好きな人はいない。


「うーん…特に思いつきません。
ごめんなさい。橋本くんのプランに従います。」



「…わかった。じゃあ、行こう。」



ちょっと無理やりそうに笑って橋本くんが歩き出す。


好きな子のことを意識するとやっぱり罪悪感がたしかにあるけれど、


でも、今まで見るだけだった橋本君の近くにいられる。



わたしは、このささやかな時間に感謝しなくちゃいけない。




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