嘘恋シアター
「神谷の家ってどこ?」
「学校に1番近い駅から2つ目です」
「そっか。じゃあ1駅だけ遠くに行ってもいい?」
「うん」
わたしが橋本くんと普通に話してる‼︎
こんな日をどれくらい妄そ…いや、想像しただろう。
隣を歩けるなんて。
夢みたい。
駅に着いた。
1駅多く乗るなら切符買わなきゃ。
券売機の方へ行こうとすると橋本くんがそれを遮った。
不思議に思っていると、
「俺が払うよ」
ってお財布をだし始めた。
「えっ、申し訳ないし1駅分くらい自分で出せるよ!」
わたしはブンブン首を振って否定する。
「1駅分くらい、俺に払わせて。
神谷に付き合ってもらってるんだし」
その一言に想像から現実に引き戻される。
あぁ。そっか。
そうだった。なに勘違いしてるんだろう、わたし。
わたしはお芝居に付き合っているだけで、橋本くんと付き合っているわけじゃない。
きっと…借りとか作りたくないんだ。
これからずっと、仲良くするわけじゃないから。